すごいぞ!T―1グランプリ
T―1グランプリをご存知ですか?宮崎県都城の若手茶業者三人衆が考案したイベントで、2007年10月、2008年11月に開催されました。小学生対象のこのイベントのすごいところは、一方通行の「教える」イベントではないところ!賞品は任天堂Wii。事前にテキストを渡し、予習してわからなかったらお茶屋さんに聞きに行くという、受身ではない参加型の仕掛けが機能して、当日のイベント会場の真剣勝負の熱気に圧倒されました。このイベントを考え実行するまでの七転八倒、都城T-1グランプリ実行委員会三人衆の心意気をお聞きしました。
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任天堂Wiiを目当てに小学生がアツク日本茶に関わる!
鎌田茶業株式会社 常務取締役 鎌田俊作氏
くろき製茶株式会社 常務取締役 黒木祐二郎氏
有限会社カネタツ(お茶のさかもと)専務取締役 坂元寛之氏
坂元:そもそものきっかけは献茶祭でした。都城の茶祖と言われている池田貞記翁、この方が江戸時代に宇治に出向いた時に、宇治と都城と地形が似ていることからお茶が広められたんですが、その業績を称えて貞記さんの石像のある神柱公園に、毎年十月に茶業者が集まり参拝するのが献茶祭。茶業関係者が一同に集まるのに、身内だけなのでもったいないなと‥。
鎌田:正直言うと、(献茶祭)つまらーん(笑)。僕達は青年団で、お茶の淹れ方教室とか、ふるまい茶とか、沢山やってきたけど、どれも一回で終わってしまう。楽しかった、勉強になった、と素晴らしい感想はもらいますよ。でもその場限り。費用対効果を考えたら、むちゃくちゃ効率が悪いわけです。
黒木:もっと継続性のあるもの、消費拡大に繋がる仕掛けを作りたい。そのためには本当の消費者目線で、もっと日本茶が消費者の生活に浸透するイベントにしたいと、思ったのですね。
坂元:二〇〇七年は桃園天皇に都城茶を献上してから二五〇年という文献が残っていて、記念イベントをするこのチャンスに「どげんかせんといかん」と(笑)。
黒木:大きな大義に動かされたんです。
坂元:効果があって、継続できて、浸透して、と三人で考え始めると、ポンポンポンポーンとアイデアがどんどん出てきました。
鎌田:淹れ方教室が正直つまらんのは、先生となって、上から目線で教えるからです。子ども達がやらされているのか、進んでやるのか‥。この違いが大きなポイント。どうやったら参加型のイベントにできるか、ということですね。
坂元:お茶の淹れ方教室に来ても、帰ったら自宅に急須がないかもしれないわけです。そういう可能性も踏まえて、どう生活に入り込むように仕掛けるか? どの世代を攻めようか、というのは割とすんなり決まったよね。
黒木:毎年のように小学三年生が綜合学習で当社の工場見学に来ていたのですが、とても反応が良かったんです。日本茶を淹れるのは、小学生にとって非日常なので、ミニチュア版コンテストみたいなことをすると、とても喜んで積極的でした。この経験からターゲットは小学生と決めました。
坂元:場所と日にちを決め、イベントの大枠は「クイズ」「淹れ方」「種類当て」としました。Wiiを景品と謳うと教育的観点から教育委員会の後援がもらえないと考えて「豪華景品」と一年目のポスターやチラシには書いたんですが、「で?何もらえるの?」と子どもは聞いてきます。「Wiiが景品」と書いた別刷りのチラシを作ったら、格段に反応が良くなって(笑)、二年目は堂々と「Wiiが景品」と謳いました。同時進行で、お茶クイズの叩き台を小学生の学習ドリルを参考にして作って小学校の先生に見せに行ったり‥。たとえば「抽出」「湯温」など当り前に使っている言葉をやさしく言い換えたり、ルビも大切。急須もルビなしでは読めないですから(苦笑)。
鎌田:難しくするのは簡単ですが、やさしくするのは難しい。子どもは勉強グセがついているので多少ひねりも入れて、勉強して来ないと点数を取れないレベルにするのがノウハウです。当日たまたま運が良くて優勝してしまう、ということがないように配慮しました。この大会に参加するために事前に勉強したり、淹れ方の練習をして、大会後には小学生がお茶ファンになっている(笑)という仕組みです!
黒木:小学生本人だけでなく、家庭・学校・友だちを巻き込むことも意識しましたね。三人とも小売業の感性があるので、いかに店に足を運んでもらうかがポイントだ、という共通認識があって‥。
坂元:練習用のお茶を二〇グラムつけて、事前に渡すテキストを読んで練習してみて、わからないことがあったら近くのお茶屋さんに聞きに行こうね、という流れを作りました。鎌田:自分達の世代はバブルを知りません。「昔は良かった」という経験はなく、この業界に入った時から「お茶を売るのは大変だ」がスタートでしたから、煩わしいことを厭わない。手間をかけなくては茶の消費は縮小していくという危機感があります。
黒木:お茶に限らず簡便性に押されて、急須もお湯も茶葉も面倒臭い時代。お茶の消費への危機感は三人とも同じです。
鎌田:現在の茶の消費は高齢者に支えていただいています。若い世代は急須を使わない等、食文化や茶の立ち位置が劇的に変化している。でもまだ今なら若い人も「やったことないけど知っている」訳です。この間に何とかしなくては、どこをくすぐれば全体に火が点くかなあ、と必死に考えました。
坂元:大会が終わる時に、自分が戦いで使った急須をプレゼントします。Wiiに吊られて、チャンピオンになることが目的で参加したのに、終わると参加した子ども達みんなに日本茶の裾野が広がっていることを目指しました。
黒木:しかし、実際に開催する、となると、一年目は何もノウハウがない訳です。教育委員会も市役所も記者クラブも行ったことがない。名義後援の取り方も知らない。ゼロからのスタートと言いますが、私達の場合はマイナスからのスタートという感じでした(笑)。
鎌田:小学校にチラシを配布するのだから教育委員会を通さなくちゃ、とか。実際熊本(の全国お茶まつりで開催されたT-1グランプリ)では新聞広告で募集したので、教育委員会が必須ではないんですが‥。動く前は三人で盛り上がって、学校別に団体賞を決めようとか、満点が複数名出たらどうするとか言って。
坂元:フタを開けたら応募がない!十月十三日開催なのに八月末日時点で十人弱。夏休みに募集という時期も悪かったのですが‥。
黒木:脇汗ダーッ(笑)。イベントの継続性と言ったところで、初回で躓いたら一回で終わりですから。
坂元:そこからはもう、サイドビジネスのように時間を作ってはポスター貼り。図書館とかレンタルビデオ屋、本屋‥。携帯電話で「本部が強い○○はダメ」「○○チェーンはOK
」と連絡取り合いつつ巡回です(笑)。
黒木:たまたまローカルFMの「友だちの輪」みたいなコーナーに出演する機会があって、一人ずつT―1グランプリを熱く語って次の一人に廻して、翌日もT―1の話をして‥。
坂元:三人目はラジオ局の人から「今日はT―1やめて」と言われるくらい(笑)。
鎌田:(ノートを広げて)ああ、ここに記録がある。九月十八日時点でエントリー六人(爆笑)。
坂元:そこからはローラー作戦。自分達の同世代の子どもはまだ幼稚園くらいが多いので、友人のお姉さんの子どもに「小学生のお友だちを紹介して」とか、「団地の仲間に配ってね」とか。
黒木:エントリーして来た女の子の家に電話して「友だちを誘ってね」とお願いしようとしたら、お父さんにものすごく怪しまれたり(笑)。
坂元:百人集めても六人だけでも、かかる経費は同じ。必死でした。
黒木:主要小学校にもう一度まわったこともあって、九月二〇日を機に一挙にエントリーが増えました。開催日前一ヶ月切っていますから、なるべく早くテキストを送ってあげたくて、一日に何度も郵便局に通いましたよ。開催四日前までエントリーが続きました。
鎌田:練習したいけれど、どこに行けばいいですか?と組合に電話が入るようになって、今度はその対応に大忙し。小学生が母親を連れてお店に来る、と予測していたのですが、本気具合はすごくて、パパママ兄弟家族総出で親も真剣!
坂元:淹れ方を実演するでしょう?子どもは一生懸命メモをとる。親はデジカメ片手に「ストップ!」「パシャッ」っていう感じ。色々な角度で何枚も、すごいテンションなんです。鎌田:逆に受けいれるお茶屋さんとの温度差が課題でした。T―1グランプリの後、小学生がチャリに乗ってお茶を買いに来た!感動した!っていうお茶屋さんの声もあって、続けていけば活気に繋がると確信しています。二〇〇七年の十月は、準備でほとんど自分の会社の仕事していない状況でしたけど(笑)、非常に満足のいくイベントになりました。
黒木:終わってみると、思惑以上に子どもの反応が大きかったですね。
鎌田:当日応援が組合・青年団・行政などの有志が四〇名も来てくださって、どう動いていただくか、スタッフスケジュールを作ったり‥。
坂元:前日は寝ないで個人別の行動指示書を作ったり‥。
黒木:実際、始まったら皆さん気がきいて動きがこなれていて助けていただきました。当日司会のマイクを握った坂元さんが絶品で、百点が六名出たり、昼食後の○×クイズの問題用紙を忘れたりというハプニングにも、首の下は大汗でも顔はクールに対応出来たし!
鎌田:百点の子はおらんやろう、と思っていたので、子どもの本気ってすごいなー、と。テキストは二人分のお茶の淹れ方ですが、三人分のお茶を淹れる決勝戦を急遽やりました。案外応用出来るのがわかって大きな収穫、翌年は上位五名で決勝戦という流れにして‥。まだまだ日本茶に希望が持てると感じましたね。
坂元:すごく盛り上がって、「来年も挑戦する!」って帰る子も多かったので、二〇〇八年は人集めについては余裕ぶっこいていたんですが日曜参観で五十名参加者が消えて、再びローラー作戦(笑)。でも三〇名は最初からのエントリーでしたから、初年度に比べて口コミで認知度が上がっているのがわかりました。一般の方が参加できるサブイベントに挑戦して、こちらも好評でした。
黒木:「昨年はドキドキして上手に淹れられなかったので、今年は毎朝家族のお茶を自分が淹れて練習しました。頭ではなく身体で覚えたので、今年は上手に淹れられました」とか「参加賞でもらった急須で、息子がお茶を淹れてくれてうれしかった!大会後、我が家では急須でお茶を淹れて飲むようになりました」というような参加者の声をいただいて、何を目的にT-1を開催するのか、消費の裾野を広げるという当初の目的がきちんと果たせたことに感動しています。
鎌田:当社と黒木さんのところなんか、組合から一歩出たらテナントでは目の前に店舗を構え小売で戦をしている間柄です。でも今は自分の会社のことだけ考えている場合じゃない、という認識で繋がっているから、一緒に知恵を絞り汗をかくことが出来ました。鹿児島や八女でも今年は開催が決まっています。色々な場所で、小学生を巻き込むこのイベントを継続して出来たら、きっと消費の活力に繋がると思います。
~T-1グランプリ実行委員会より~
「T-1グランプリ」のイベント成功後、ありがたいことに県内外の茶業関係者様からたくさんのお問い合わせをいただくようになりました。
こういった声にお応えできるよう、吉村紙業さんの協力の中、このイベントの内容やノウハウをまとめたものを作成し、全国の日本茶普及・販促に情熱を注ぐ方たちのお役に立てれば・・と思っております。またイベントのタイトルを「T-1グランプリ」(商標登録申請中)に統一する事で、全国大会を目指したいと考えています。
タイトルを変えて似たようなイベントをするのは簡単ですが、各地で単発の花火をあげるより、みんなで大きな花火をあげてみませんか?
【コラム】
この「T-1グランプリ」という素晴らしい仕掛けを、全国的に方向性をぶらさずに広げたいと考え、ノウハウ満載のテキスト・テスト・開催告知ポスター・チラシ・景品を一式セットにして販売します。五十名以上の小学生(四~六年)のエントリーを見込める茶業者(組合でも会社単位でも可)が対象。各地で開催されたら、2011年には全国決勝大会をするお手伝いをしたい、と吉村紙業は野望を抱いております!




