第54号 株式会社 お茶の清香園 徳永亮氏

積極的な経営で明日を拓く経営者をご紹介するこのコーナー。
今回ご登場いただいたのは、熊本県熊本市の株式会社お茶の清香園様。「ふるさと万年茶」という健康茶を30年かけて清香園の顔に育て上げ、一方スーパー卸の業務内容を、約十年かけて通販一本に業態変換されました。「利益は後からついてくる。」何度も社長が口にされたこの言葉は、「商売は一日一日変わる。変わらないのは一つ、お客様をだましてはならん。」という信念と共に、会社の揺るがぬ土台となっています。    

株式会社 お茶の清香園
代表取締役社長徳永亮氏

取材のために久しぶりにネクタイをした、と笑う社長。
前向きでバイタリティがあって、元気とやる気をいただいた取材だった。
 
 
フードパルに1,200坪の工場。売店としての機能も持たせ、どう展開するかはこれからのお楽しみ。
本店。隣接している製茶工場は手狭になったため、フードパルという食品団地へと健康茶部門を移転した。
● スーパーから通販へと転換しようと思われたきっかけは何ですか?
ずっとスーパー納めを主体として力を入れておったとですよ。しかし15年位前に、このままだとスーパーはダメになると感じました。しょせん自分で売らねばダメ、個人のお客様を大切にしようと。今通販をしておるでしょう、青森のお客様からリンゴを送っていただいたり、お手紙は日に何通もいただくし、お電話をいただけば30分位盛り上がってお話をすることもある。うれしかですよ。私はゴルフも酒もタバコもせんけんね、交際費はゼロ。通信費にかかるお金なんて、そういう遊びに使う金に比べたら安いものですよ。
 
● 15年前ですと、量販店全盛の時代ですよね。
そうです。一つの地域にAスーパーが出店するとすぐにBスーパーが出店して、弱肉強食の世界。その繰り返しです。そんな商売に未来を描くことができませんでした。
しかし、当時のうちの通販は、自然発生的に引越ししたり贈りものとしてもらった方から「送ってください。」と言われて送るだけ。前金制で、通信販売といってもひどかものでした。通販で購入してくださったお客様に年賀状を出して「5千円以上お買い上げの方に急須をプレゼントするお年玉セール」を初めてしたのは何年前でしょうか?今は「心と心の通信販売」で、実際に過去一年で購入していただいているお客様が2万5千件いらっしゃいますが、ここに至るまで試行錯誤の連続でした。
 

大麦若葉。わかりやすい明るいパッケージ。

にんにく卵黄・黒酢。健康というカテゴリーの中で、これらも収益の柱.
● どんな試行錯誤だったのですか?
まず色々な勉強会に行ったとですよ。中には「なんじゃ?!」と思うようなのも沢山ありましたけど、その中で「これは!」と思うと取り組みました。新商品も色々出します。10個出して一つ成功すれば良いという感じかな(笑)。興味があればすぐにその人に会いに行って話を聞く。それから新聞の広告は切り抜きながら隅々まで読みます。「皆さん、色々考えているなあ。」と感心しますよ。そしてその考えにはお金がかかっている。勉強になります。
本格的に通販一本に絞って取り組んだのは6年前です。今99歳の親父、そして母と社長職のバトンは渡りまして、私が社長になったのが5年前です。それまで私は経理をきちんと深く見たことがなかった、小泉首相じゃないけど丸投げでね。正月に過去5年分の資料を並べてみたら、数字はジリ貧なのですよ。昨対98パーセント、96パーセントという感じで。こりゃどうにかして落ちるのを止めよう、と思いました。1月6日の朝礼でね、社員に私、昨対120パーセント達成を誓ったですよ。でかかこと言ったもんです。(笑)そこからは必死でね、24時間寝ても覚めても商売のこと考えて‥。結果は102パーセントでした。その翌年からは昨対120パーセントの推移です。今年の新茶は特に良かったですよ。あさつゆ・さえみどり・やぶきたの三つの品種を売りましたが、昨対160パーセントいきました。私の作る日本茶は、香りが高いのが特長。けむりが出るくらい火入れを強くします。深蒸し全盛の、お茶に香りがなくなったともいわれる時代で、人と逆行することをする。かわりもんですばい(笑)。
熊本市内では私は一切営業しません。通販のお電話でお茶のご注文をいただいたら、「今はどちらのお茶を買ってますか?」と聞きます。それが熊本市内のお茶屋さんだったら「それは良かお茶です。そちらのお茶を買ってください。」と一度はお断りします。せーまか熊本でバッティングしてもしょうがないですもん、目指すは日本。日本は広かですよ、でかか方が面白かですもん!
「買ってください」の商売はダメ。「売ってください」と言わせる商品を持たねば!ペットボトル全盛の時代ですが「リーフはうまかばい!」とお客様が実感する商品を持てれば、これだけ大手さんが緑茶のことをコマーシャルしてくれるわけですから、ものすごい追い風だと思いますね。
 

ふるさと万年茶。100gの日本茶のメインブランド「天下一」に比べると、
ボリュームたっぷり。茶葉は450g入り、ティーバッグは10gが38個入り。
 
● 「ふるさと万年茶」が清香園さんの「売ってください」の商品の柱だと思うのですが、これは何年前に商品化されたのですか?
弟の常務が31年前に考えました。健康茶と聞いて、当時はこの私が「いや、うちはお茶屋じゃけん。」と躊躇した。しかし弟は諦めませんで、売り出しをするでしょう、そこで「こういうものも健康茶の中に入っていたら。」とお客様に言われると、その足で可愛がっていただいていた大学の教授のところに相談に行ってね、成分の研究をする。そんな繰り返しの中でふるさと万年茶は作られていきました。最初はとうきび・柿の葉・どくだみ・ハトムギ・はぶ草・はぶ茶・クコ・くま笹の八種類でした。
今でも決して完成というわけではありません。今回もご要望の多いゴーヤ茶と黒豆茶をブレンドして全部で33種類の配合、袋の絵柄も変えました。お客様の声を聞きながら進化し続けることが「売ってください」と言われる商品であり続けるには大切です。
のぼせてはダメ、横着もダメ。「売ってください」と言われても「買っていただく」という心は持ち続けていくことですね。
 

本店店内。贈答品も「よく使っていただきます。」

日本茶コーナー。
バックの茶畑の緑に癒される。
健康茶の売場には、全国で初めて健康茶として
お昼の番組「ごちそうさま」で紹介されたというPOPがある。
 
● 袋の裏面にはきちんと成分分析表も印刷されていますが、中身についてのこだわりを教えてください。
90歳の誕生日に郵便局で10年ものの定期預金を組んだ(笑)親父が、商売について二つ教えてくれました。一つは「商売は信頼、お客様を裏切ってはいけない。」ということと、もう一つは「お茶屋は利益が五割なきゃいけん。」ということ。
まず信頼の部分、これは私の商売の基本でもあります。過去にも万年茶の原料のあまちゃづるや霊芝の価格が上がって利益が吹っ飛んだことがあります。あまちゃづるは1キロ1万5千円にもなったとですよ。しかし配合の割合ば変えんかった。お客様を裏切ってごまかすくらいなら、商売はやめた方がよか。そう思ってふんばりました。
しかし、五割の利益についての考えは、私はちがう。考えてみてくださいよ。お茶屋が五割も利益をとったら、お茶屋に原料を売った人やお茶屋から商品を買った人は幸せか?幸せでないでしょう。作った人が一番喜ぶ、買った人が二番目に喜ぶ、売った人が三番目にちーっと喜ぶ、私はこれが商売と思うとです。利益は後からついてくる、目先の商売では味気なか!
農協で生産者を集めて話したことがあります。除草剤をすごく撒かれるということで、「百姓ば土ば可愛がらなければいけん。5年間撒かないでくれたら、全部清香園が買うから。」と約束した。今ではそこから八トンも桑の葉を買います。こちらが「こういうものを作ってくれ。」と注文をつけても、必ず買ってくれるという保証がなければ作り手は冒険しません。確かに必ず買うということは、失敗しても買うということだからリスクは大きいですが、自分の思うとおりの注文がつけられる。原料を売る人にとって、安心して作れる環境は大事だと確信しているので、私はどんどん契約農家を増やしています。
 
 
● もちろん国産ということですよね?
いいえ、原料によっては国内で手に入らないものもある。その場合は、私は必ず現地に足を運びます。たとえばヒット商品の「大麦若葉」、これは最初国産原料で作っていたのですが、年によって原料の出来不出来に大きな差がある。今回は良く出来た、と安心していると次はクレームだったりするのです。そんな時、ニュージーランドの大麦若葉は良質という情報を聞いて、早速ニュージーランドに行きました。見渡す限り大麦若葉の畑、人間がおらん、羊と牧羊犬しか目にしない。スケールの大きさに圧倒されました。
土壌消毒も薬を使わず熱風消毒。完全無農薬有機栽培です。それで産地を変える決意をして、お客様には「国産の大麦若葉はこういう難点があったが、ニュージーランドにするとこんなに良くなる。私が現地を自分の目で確かめてきたから、安心してください。」とDMで説明しました。一時数字は半分まで落ち込みましたが、商品の力でしょう、今は国産の頃よりもたくさんのご注文をいただくまで盛り返しました。自分が売る品物は自分で確かめなければダメ、というのも私の信念の一つです。
 
心と心をつなぐ社長直筆の「清香園通信」。
「くるみ」とはお孫さんのこと。ほのぼのした内容で、やさしい気持ちになれる。
 
● 健康茶と日本茶の割合はどのくらいなのですか?
健康茶が75パーセント・25パーセントが緑茶です。日本茶の割合は増えていますよ。お茶はどこででも買える。だからこそ一対一の信頼関係が決め手になる。上位百件のお客様の購買状況は随時チェックしていて、ロイヤルカスタマーが三か月注文をくださらないと心配になって私自らがお電話を入れます。ペットボトル全盛の時代だからこそ、日本茶リーフにいく足がかりをどう作るか、遣り甲斐のある仕事です。
「山茶」という裏山の在来種で作ったお茶を釜入りに仕上げたら、あっという間に完売でした。次の6月が来るまで皆さん楽しみに待ってくださる。特長を出し、そこに物語があれば、お客様は高い安いと言わずに買ってくれます。生産者が直販をすると色々言う人もあるようだが、私はどんどん売ったらいいと思う。私たちは生産者が出来ない売り方をします。複数の産地のお茶をブレンドして、火入れを○度にして、こんなお茶が出来ましたというストーリーを作る。それが商人の仕事です。
天変地異も商売の糧、信頼関係を作る好機です。四国の水不足の時には、お茶を買ってくださった方にミネラルウォーターをプレゼントしましたし、兵庫の地震の時にはお客様にお見舞いを送りました。「忘れてませんよ、心配してますよ。」ということを伝えたかった。多分そこだけ見れば損だが、長か目で見れば良かこともあると思うとです。
 
● 今後の目標についてお聞かせください。
一つは日本茶の割合を半分までに引き上げること。私は一番茶しか摘まない、樹ば痛めつけんと可愛がらねば。健康茶の時にも、自分らの知らんところで有名人が「私のお気に入り」というようなコラムで清香園のお茶を紹介してくれたり、テレビが取材に来るという中で広がりました。特長のある商品をストーリーと共に販売し、日本茶の売上を増やすことが一つの目標。
もう一つは後継者の育成。「若いうちはどんどん失敗せい。私がついとる間は取り戻してやるけん。」と若い後継者である甥二人には言っています。全部成功したら面白くない、失敗があるから成功の喜びがある、私に迎合せずにどんどんチャレンジして欲しい。そう思います。
 

株式会社 お茶の清香園

本社所在地:

〒860-0081熊本県熊本市京町本丁6-51
電話
096-352-2076
 
FAX
096-352-2091