「恵方巻」と「新茶」

新茶を買う理由

「新茶」の袋のデザインを、消費者の意見を参考にして決めたくて、消費者の座談会を始めたのは1995年の頃です。その当時は「新茶って、八十八夜っていうから、8月18日頃に解禁するの?」という質問にショーゲキを受けていたのですが、令和に入ると「そもそも新茶ってどんなメリットあるんですか?」みたいな反応が圧倒的に多くなり、「新茶」という言葉を聞いても心が動かない、ワクワクしない、ということが顕著になってきました。そもそも、「新茶」と聞いてもそそられない。買う理由にならない。

コトバが市場を創る

先日、マーケティングの師匠と仰ぐお茶屋さんと話していたら、「コトバが市場を創るんだ。昔から〇〇のファンという人はいたけれど、推し活というコトバが生まれたから市場が生まれ、広がった。だとすれば、新茶に代わるコトバを見つける必要がある」とおっしゃっていて、なるほどなーと思いました。
たとえば、「恵方巻」が、もしも「節分海苔巻き」という商品名だったら、ここまで認知され広がったかどうか? 「恵方巻」だから、「今年の恵方は南南東」「恵方を向いて黙って食べる」みたいな行為が付随されて、広がっていった気もします。

「節分海苔巻き」からの脱却

「母の日新茶」は、言ってみれば「節分海苔巻き」です。逆に、新茶という言葉を使わないというシバリの中で、買ってみたくなる、飲んでみたくなる、そういうネーミングを見つけたい。「コトバは市場を創る」というのは、「ネーミングが買う理由を創る」ということにつながるということかもしれません。