椿茶園

「呼応」するチカラ
キャッチボールで進める店舗づくり

椿茶園様は、年間150万人の参拝客が訪れる三重県鈴鹿市の椿大神社の参道に立地しています。お客様の目の前で美味しいお茶の淹れ方を実演しながら「お茶」を提供するカフェと、自社で生産したお茶やお土産としてのギフト商品、地産品等の販売スペースを持つ店舗を2016年11月にオープンされました。

空間デザイン

■ 呼応するチカラ

「例に出すお店がどこにもない」ーー初めてお会いした際の市川社長の印象的な言葉です。「どこにもないお店」をどうやって実現するのか。ーー完成に至るまで道のりは、どこにもないお店への「想い」から始まる「キャッチボール」の連続でした。事業コンセプトをお聞きし、空間やパッケージに表現。ーー「想い」に呼応してデザインする、デザインに呼応して、さらなる「想い」が出現する。この繰り返しで、計画は進みました。

■ 参拝客をお店に誘導する

参道に立地するため、お客様の動線は明確です。はじめに神社を目指し、参拝後に、休憩や土産品を購入します。このお客様を確実にキャッチするために、アプローチ動線や建物の魅せ方に工夫をしました。神社を目指す向きに喫茶コーナーの窓とサブ出入り口を設け、「なんとなく」店舗の様子を見ながら神社を目指せる外観。参拝後に神社から下る際は、大きなガラス面を設け「しっかり」と内部をみせ、店舗へ誘導する外観。出入口は、通り抜けが可能なようにし、店舗の一部が参道になったような賑やかな往来を想定しています。

■ 一体空間を分節し、出来事が共有化される空間づくり

店舗内は、主に①喫茶スペース②物販スペース③バックオフィスから構成されています。さらに小さなゾーニングを行って、参拝帰りの気持ちに合わせた複数の居場所づくりをしています。同時に、お客様が喫茶と物販スペースどちらにいても、どちらの魅力も感じながら滞在し、相乗効果がでるような配置をしています。

市川社長とのキャッチボールでつくり上げた「椿茶園」。その「想い」は大きな円弧を描き、次は「地域」と呼応し、遠くへと展開していくことでしょう。

グラフィックデザイン

■ まだ見ぬお店の“らしさ”を探す

お店のグラフィックデザインは、ロゴマークづくりから始まりました。世界にひとつのそのお店 “らしさ” をカタチにする。ヒアリングでは新しくお店を始めることになったきっかけや、お茶づくりで大切にされてきたこと…これまでのこと、これからのこと、広くお話をうかがいました。プロジェクトのメンバー全員で、まだ見ぬ「茶園」の “らしさ” を探っていきます。

そしてうまれたのが写真のロゴマークです。椿大神社に訪れる女性の参拝客をメインターゲットとし、幅広い年代の女性に受け入れられる落ち着いた可愛らしさのロゴマークに仕上げました。一筆書きの椿には「新しいお店と丁寧なお茶作りが、椿大神社の歴史とともに続いていくように」という願いが込められています。

■ 世界観を伝えるアイテムたち

オリジナル茶袋は、自由で個性的なお茶の名前から発想して「お茶の葉の万華鏡」をコンセプトに制作。紙袋・レジ袋・包装紙は一筆書きの椿を大きく模様として扱いました。その他にもショップカード、陶製カップ、看板…統一感はもちろん、それぞれが担う役割を考え魅力的なものとなるようデザインをすることで、お店の世界観がより確かで豊かなものになると考えています。

「店は育てていくもの」というのは市川社長の言葉です。オーナーが、私たちが、お客様が、お店を育てる。そこにこそ、お店づくりのおもしろさがあると感じています。

 

椿茶園 市川 晃さん

若い女性客が、お店に来て「お茶はありませんか?」と聞かれた。当店はお茶屋なのに… 。商品を勧めると、「私が欲しいのは、今、飲むお茶です」と言われました。だから、日本茶カフェを行うことに。お茶バーカウンターを設けて、急須、湯冷しを使い丁寧にお茶を淹れる。自分が茶畑から育て作ったお茶を自分が淹れる。日本茶の魅力を伝えていければ幸いです。