茶業に携わるたくさんのガンバル人の中から、とびきりの頑張り屋さんをご紹介するこのページ。 |
●金子園さんに入社するまでの経歴を教えてください。 |
私が新卒の頃は、まだ「寿退社」という言葉が当り前に使われていた時代で、女性は男性社員の補佐をするのが仕事、という位置付けの会社が大半だったんです。就職活動をする中で、「女性にもちゃんとした活躍の場があって、ずっと働き続けられる会社に就職したい」という思いがずっとありました。母ですか?母は、結婚前は保育士で、結婚後は金子園府中店で働いていましたね。鍵っ子で寂しかったので、母の影響でキャリアウーマンを目指した、というのとは違うのですが‥。 転職先は直輸入のブランド品を初めて日本に紹介した老舗の営業販売部です。ここでは、大変な高額商品を値引きせずに販売することの難しさと楽しさをとことん学びましたね。例えば地方にいらっしゃるお客様が、「息子の卒業式に着るスーツをフルセットで、丈詰めもして送ってください。貴方のセンスで選んでね」というようなお電話をくださるのです。商品知識はもちろんですが、販売員の人間的なスキルがとても大切で、「この人から買いたい」と思っていただけることが前提。お誕生日のアプローチやお手紙・お電話などすべての接点で、「失礼がないように」というレベルを超えて、いかに一人一人のお客様の心に届くか、を想像して行動するということが、とても勉強になりました。 |
●入社される前から、お茶屋さんの仕事に興味はありましたか? |
利用したこともないし、日本茶も積極的に飲まない、ごく一般的なOLという感じでした(笑)。そう言えば、セールスプロモーションでたまたま裸麦が必要になって、探したことがあったんです。デパートにもスーパーにもなくて、必死になって探し回っていて、「あっそうだ、金子園にならあるかも?」と思って行ってみたら、当り前のように何種類も裸麦があるんです。「さすが、すごいな、専門店は!」と感嘆したことを鮮明に覚えていますね。 |
●実際に入社されてからはいかがでしたか? |
すべてにおいて「びっくり」の連続(笑)。一つの光を目指してチームが組まれてプロジェクトを廻すという仕事のスタイルから、個人個人が日々の案件を各自の知恵と経験で対応する仕事へ、スピード感も価値観もまったくちがう世界です。 |
●雅恵さんは、何が足りないと思われますか? |
情緒的な部分、お客様の気分を盛り上げるところが足りないのではないでしょうか? それでも行きたい、利用してよかった、と選んでいただくには、「お茶なんてどれでも一緒でしょ」とスーパーでトイレットペーパーを買うような感覚ではなく、日本茶の魅力をいかに深掘りして、専門性を情緒的な観点で伝えるか、ということが大切だと思います。 |
●20種類の日本茶を無料で飲み比べるイベント「テイスティングフェスティバル」に挑戦されたのも、同様の考えからですか? |
まず、自分がすごく行ってみたいなあ、と思えたことですね。もう一つは、OL向けのフリーペーパーの編集をしている友人が、誰も予想していなかったのに「OL煎茶教室」が色々な教室の中で一番人気だった、と話していたこと。お店で待っているだけでなく、イベントで味を知ってもらう、実際に日本茶の奥深さの一端を体験していただくことが、きっと次に繋がると思えたんです。 根っこがないと花は咲きません。花を摘むことばかりに目が行きがちですけれど、根っこにどんな栄養を与え、どんな風に手をかけるかで、咲く花は大きくちがって来ます。テイスティングフェスティバルは、美しい花を咲かせるための根っこへの栄養ですよね(笑)。 |
●実際のイベントでは、お茶を淹れる社員の皆さんのモラルの高さ、真剣な姿勢に感動しました。 |
私自身も驚きました。金子園のスタッフは、目利きのお客様を日々お相手しているので、お茶に対する姿勢はとても熱い。玉露の担当になったスタッフは店頭の試飲で玉露を淹れて練習していたり、当日だけのスペシャルティの担当者は「このお茶に関するもっと詳しい資料をください」と問い合わせてきたり、家で特訓したというスタッフも沢山いて、イベント後には「入社以来こんなに真剣にお茶と向き合ったことがなかった」「感動した」「またやりましょう」と、スタッフのモチベーションも大変上がりました。 |
●実際にイベント当日までのプロセスでご苦労された点について、お聞かせください。 |
全く初めての経験ですから、すべてが手探り。どうやったらいいか、吉村さんのスタッフと一緒に作り上げたという感じです。 ほとんど売る気ゼロだった物販もお茶だけで208本販売し、高いお茶・希少なお茶から売れていって、こういう場を作って日本茶を体験していただき、お客様の気分を高揚させて、価値を感じていただくことが出来れば、安売りしなくても購入していただけるのだ、という発見もありました。 |
●入場時にテイスティングブックを渡し、その記述を頼りに飲み比べをして、最後に投票をする、という一連の流れがあるので、お客様参加型のイベントになっていたように感じました。 |
テイスティングブックは、20代の急須をもっていない方にも伝わるように、やさしく簡単な言いまわしに苦労しました。「すっきりと目覚められそうな香り」とか「口の中がさっぱりする」とか、なるべくイメージが湧くような言葉を選んだのですが、参考にしたのはレストランのメニューやワインの説明書など、ちがう業界ですね。
今年は金子園創業75周年の年。感謝の気持ちも込めて、第2回テイスティングフェスティバルをする予定です。2年目の今年は、企画の段階からスタッフを巻き込んで、イベントを作るプロセスも共有したいと考えています。 |