「VS」POPの効用

ワルイところも書いてあるPOP?

 座談会で「心に残るPOP」というお題になった時に「きちんとワルイところも書いてあるPOP」という意見が出て、「????」と思ったのですが、先日「おお!」と思うPOPに出会いました。
 お餅のPOPなのですが、2つの商品がどどーっとボリューム陳列されていて、「杵つきVSお徳用」と書いてあるのです。その「VS」の文字のカラフルで大きいことといったら!思わず「なになに?」と読んでしまいました。
 すると、「498円の杵つき餅はもち米を搗(つ)いたもの。298円のお徳用は餅の粉を固めたもの。一見同じお餅の外見だけど、お雑煮の汁に入れると差は歴然。杵つき餅は搗(つ)きたてのコシのある柔らかさ。お徳用はどろどろに溶けちゃいます。」と書いてあります。決め言葉は、「お財布のヒモのカタイ不景気だけど、モチモチとドロドロ、あなたはどっち?!」
 ほほーっ、と思ってしばらく売り場に立って見ていましたが、POPの文章をきちんと最後まで読んだ人は、ほぼ全員杵つき餅を選んでました。(POPを読まず、価格だけでカゴに投入する人も相当数いましたけどね)

価値を伝える
 座談会で「きちんとワルイことも書いてあるPOP」の話題の時に、「噛み切れない海苔ってきちんと書いたらいいのに!」という意見があって「そんなこと書いたら売れないだろ!」と心で突っ込んでいたハシモトなのですが、「VS」を使ったらバッチリなのかもしれませんね?
 「498円の○○海苔は、青混ぜといって青海苔の磯の香りがほろりとして、歯切れがパリパリ。298円の○○海苔は、黒々として巻き物に最適だけど、噛み切れないほど厚い。パリパリと噛みきれん、あなたはどっち?」とか、「VS」を使って、価格の大きく違う商品を比較すると「単なる安い高い」という土俵から「どういう価値を選ぶか」という土俵にシフト出来るような気がします。
  かっこよく言えば「商品価値を伝える」ということ。不景気とはいえ、ささやかな贅沢や豊かさには、納得すればお金を払う人は、まだまだ沢山いるのではないでしょうか?逆に不景気だからこそ、ささやかな贅沢が心に響く時代だとも言えますよね!

川下の情報に噛み砕く

 「VS」で大切なのは、「川上の情報に終始せず、川下の情報に噛み砕くこと」です。お餅の例でも、モチモチVSドロドロ、というところまでいって初めて消費者の実感に繋がるワケです。日本茶でも、川上の情報である「一番茶VS二番茶」だけでは、消費者にとって「だからどうなの?」というレベルです。飲んだらどうか、それは味だけでなく、三煎目まで味が出るとか、香りが立ちのぼるとか、色々な観点の比較でOKですが、消費の現場の実感としての価値を表現してこそ、伝わります。