どこまでを「リーフ」と定義するのか?

実は保守的?! 急須を持たない20代。 

 今年の座談会に呼んだ女子高校生や20歳代前半の女性の好むデザインは、60代以上の好みとかなりの部分で重なって、保守的というか、「日本茶は和」という図式にぴったりはまっています。40歳あたり(アラフォーと呼ばれる世代)が「このデザインは若い人に好まれると思う」という指標で選ぶデザインは「なんで日本茶なのに洋風?」「雑貨みたいでうすっぺら」と酷評にさらされます。 
 でも、この保守的な20歳あたりの女の子は、実は「急須を持っていない」率が高い。日本茶は憧れだけど、実際の生活の中では、急須で日本茶をいれることはない、という実態がありました。「どうせ急須を買うなら、カワイイのを買いたい」「きちんと長く使えるお気に入りを買いたい」などと言いつつ、わざわざ急須を買いに出かける情熱もない。
 
それはティーバッグについても同じです。「ティーバッグは日本茶に対する冒とく」「日本茶ティーバッグは日本茶と認めない」というような過激な発言は、60代以上と20代あたりに集中しました。それで飲むのはペットボトル?! ちょっと溜息が出るような状況です。


ティーバッグの試飲。

 先日、この先日の状況をひっくり返すような20代の女性の発言に出会いました。「ちょっと前に、スーパーの店頭で、三角のナイロンの日本茶ティーバッグの試飲販売をしていたんです。それまでは日本茶のティーバッグは邪道と思って毛嫌いしていたのに、飲んだらおいしかったし、試飲までしておいしいことを知らせよう、というメーカーの気合いにやられたというか‥。少なからず感動しちゃったんですね。それで買って帰って使ってみたら、きちんと中味が透けて見えるティーバッグ(ナイロンのティーバッグのことらしい)は、限りなくお茶葉に近い存在なんじゃないか、と思えてきました。今まで偏見に満ちていた私ってなんだったんだろうって感じで、ティーバッグに対する偏見がなくなりました。」 
 三角でメッシュのティーバッグは、色々なお茶屋さんで販売されているとは思いますが、まだまだその存在が知られていないのも確か。試飲販売をする、つまり体験してもらう。とても大切なポイントです。


ティーバッグはリーフの一形態?!
 でも、私が何よりも驚いたのは、「三角ナイロンティーバッグは限りなくお茶葉に近い存在」という発言です。この「ティーバッグで日本茶を飲むくらいなら、飲まない方がマシ」という人が「いやいや、このティーバッグはペットボトルや粉末茶に比べてリーフに一番近いんだわ」と、イメージがひっくり返ったら、急須がないことなんて怖くなくなりますよね?! 
 アフタヌーンティなどで知られる英国の紅茶も、今では8割がティーバッグ、とどこかに書いてありました。まず茶業界にいる私たちが、「ティーバッグは安物」という固定観念から卒業して、ペットボトルから急須で淹れるお茶までの道のりの中で、もっとも茶葉に近い存在、いえいえリーフの一形態として捉え直すと、いろいろな戦略が見えてきます。
 ポイ捨てカンタンを訴求するのではなく、茶葉のグレードを訴求すること。店頭で端っこにただ陳列しておくだけの売り方ではなくPOPや試飲でスポットライトを当てること。まだまだやれることはありそうです。