「感覚転移」ができる日本茶
宣伝会議という会社が創刊した『100万社のマーケティング』という本の中で、マーケティングの専門家にインタビューをする機会がありました。その中で、へぇ~っと思った言葉が「感覚転移」です。
ルイス・チェスキンという学者さんが「消費者はパッケージに対して抱いた感覚や印象を商品そのものの価値に転移させてしまう」という現象があることを研究成果として発表しているのだそうです。
感覚転移がしやすい商品は、産地や製造方法などによって価格の幅が受容されている商材。共感できるストーリーや付加価値を感じることが出来れば、感覚転移で、商品の価格の高さを受け入れてもらえる可能性が高い。逆にペットボトルのように、500mlでいくら、という価格設定が広く認知されている商材は感覚転移がしにくいのだそうです。日本茶は、パッケージ投資の効果が期待できる商材の代表格とのことでした。
パッケージは一見さんのためのもの
あるお茶屋さんが「パッケージは一見さんのためのもの。中身はリピートのためのもの」と喝破され、「映画は、良さそうと思うから観る。本当に良いかどうかは見終わらなければわからない。見てもらうための予告編がパッケージ」と例えられていたことを思い出しました。
パッケージというのは、袋のデザインだけを指しているのではなく、厚みや質感や手触りも含むし、箱や手提げやしおりなどの総合的なラインナップで「感覚転移」が起こるのかもしれません。パッケージ屋としては、まだまだ出来ることがあるかも、と嬉しくやる気になりました。
だしパックと日本茶ティーバッグ
今回茶事記の異業種で訪問した、茅乃舎のだしで有名な久原醤油の社長さまも「伝えることは作ることと同じく商品の根っこ」と表現されていました。もともとは出産後3年以内の座談会で「日本茶のティーバッグも茅乃舎のだしを見習ったらいい!」と、小ぶりのチャック袋に入っただしをプレゼントしてくれた若いママさんの発言がきっかけでした。
そのだしパック、とてもシンプルなパッケージなんですが、しっかりとしたアルミ材質で(だしパックの多くは薄口のアルミ蒸着か中身が見えるタイプ)、小分け袋に料理読本と一緒に入っています。この料理読本、素敵な和食の写真が満載で、このだしパックがあれば簡単に作れると書いてあるのです。「これなら料理が得意ではない友人にも贈りたくなる」とママさんは言っていました。その上、無添加だから『だしパックを破ってお漬物とかチャーハンとかに利用してください』という説明もマークで載っています。なんか、すごくいいものなんだー、と感じてしまう雰囲気なんです。
なるほどー。。。。今までの座談会で「友人は急須があるかどうかわからないから日本茶をあげるなんて考えられない」という発言は若い世代で結構あったのですが、きっとこの世代は、昆布やいりこは贈らない。でも茅乃舎の「だしパック」は贈りたくなる。日本茶のティーバッグにもこの本物感と伝える力があれば、素敵な商品開発が出来そうです。