モノが売れるのではなく、ヒトが買う!!

英語の効用!?

今年の座談会で急須を深掘りして「急須のしおり」を作りました。おいしいお茶の淹れ方のしおりではなく、いわば急須のトリセツ、取扱説明書。
 急須を20個見せて投票をしていただく時に一番多かった質問は、「どうやって握るんですか?」というものでした。1月の朝日新聞の天声人語に「急須に水と茶葉を入れて火にかける生徒が続出」という記事がありましたが、そのくらい急須にも茶葉にも慣れていない人がいるのだ、という覚悟で作ったのが、急須のしおりです。
 しおりのダミーを持って座談会で見ていただいた時に「英訳があった方が、急須が
インターナショナルな感じがして格がアガル」という意見が出て、急遽小さく英訳を入れたものです。実際に使ったお客様から、拡大コピーして急須の売り場に飾ったら、外人さんが購入した、というお話もいただきました。商品を置くだけではダメで、その使用方法や注意点などを「これ、ツカエル」と感じていただけるように伝えることが大切なんだな、と改めて勉強させていただいた次第です。

「おいしさ」よりも「おいしそう」?!

あるセミナーで「モノが売れるのではない、ヒトが買うんだ。モノが売れないと価格が高いのではないか、モノが悪いのではないか、とすぐにモノに原因を見出そうとするが、多くの場合その価値が伝わっていないことの方が多い。つまりモノが原因ではなく、伝え方が問題」というお話を聞いたのですが、きっと急須をモノとして陳列していただけではこの外人さんにはその価値が伝わらず、英訳しおりの拡大コピーがあってはじめて価値が伝わって購入に結んだのだと思いました。
 お茶屋さんとお話をさせていただいていると「昔のお茶はおいしかった。今はお茶がおいしくなくなったから売れないんだ」というお話を伺うことも多いのですが、実際の座談会で「昔のお茶の方がおいしい」「最近の日本茶の味が落ちたから買わなくなった」という話を聞いたことは一度もないのです。つまり味には問題ない。伝え方に問題がある。昔ながらの伝え方では響かなくなってきているのかもしれません。
 同じセミナーで「歌の上手い売れない歌手が、いくら歌の練習をしても売れないでしょ?お茶屋さんも同じ。いくら味をよくしたって売れないんです。味はリピートのためのモノですからね。」という話もあり、「実際の味よりも、おいしそうと思わせることにこそ力を入れるべきなのかも」と思い至ったのでした。

「好き」で価格の土俵からずらす

価格云々ではなく購入してもらうためには「いいな」「好きだな」と思ってもらうことがポイント。今年の座談会で15種類のお茶の贈り物をずらーっと並べて投票してもらったのですが、女性が選ぶポイントは理屈ではなく情緒です。グラム単価ではなく、総額をぱっと見で選ぶ。総額とはだいたいの予算のことで、「超いいわ!」と気に入ると予算を超えることも可能です。
 自分がお茶以外のモノを選ぶ時のキモチの動きをトレースしてみることが、消費者のキモチに近づく一番の近道かもしれません。