手抜きのススメ?!

電気ケトル急増中!

1995年に消費者座談会をスタートした時から、アンケートをして定点観測をしているのが、「やかん」「魔法瓶」「湯沸しポット」「急須」「茶筒」「マイ湯呑み」について。持っていて使っていたら○、持っているけれど使っていない場合は△、持っていない場合は×を記入してもらいます。この中で、最近大きく変化しているのが、「やかん」「魔法瓶」「湯沸しポット」の三つともに○がつかない人が急増していること。一人暮らしの方は、お鍋一つで代用しており、それ以外の家庭では電気ケトルへの買い替えが進んでいます。電気ケトルというのは、保温機能がなく沸かしたい時に数十秒でお湯が沸くという家電製品。ですから、日本茶を飲む場合も、沸騰し立てのアッチッチ状態で淹れる場合が多くなっているということです。日本茶に適温のお湯のストックが常にある、という家庭は、どんどん減っているのです。

熱湯系に照準を。

そういうキッチン事情を反映してか、「熱湯で淹れても失敗しない」とか「忙しい朝でもパッと淹れられる」という風に評価されるお茶の評判が良いように感じます。自動販売機で煎茶も焙じ茶も玄米茶も同じ価格で売られているからか、自称日本茶好きのペットボトル世代は、焙じ茶も玄米茶も「煎茶より低価格」という認識は薄いのです。「香りがぷんと立つ」などのわかりやすい特長を武器に、「湯冷まし不要の熱湯系」にスポットを当てて、価格競争ではない土俵で、若い世代に日本茶リーフの価値を伝えていくことが出来ると思います。急須を使わず、茶こしで淹れられる、というように、ハードルやストレスを下げてあげることもポイントかもしれません。

手抜きでホンモノ?!

最後に。電気ケトルで沸騰し立ての熱湯を使って煎茶を淹れている方のコメントで、心に残ったものを2点ご紹介します。一つは、急須に煎茶を入れ、茶葉の上に氷を二つ入れ、その上に熱湯を注ぐという話。もう一つは、急須に茶葉を入れたら、まず水を急須の四分の一入れて、そこに熱湯を足すという話。どちらも邪道かもしれませんが、忙しい日常の中で、どのように手を抜いておいしい日本茶に辿りつけるか、そういうアイデアをプロらしい視点で提案する時期に来ていると思います。それこそが、お茶屋さんの知恵の出しどころかもしれない、と感じました。